いま世界の哲学者が考えていること/岡本裕一朗

大変読みやすいだけでなく、よく考えて書かれた本になっている。著者は表題をみてこの本を手に取る読者がどういうことに関心を持っているか・持つかを事前に把握している。比較的に近年の出版とあって、話題も新しい。ブームの前からガブリエル・マルクスにも触れているところはさすが。

イル・ポスティーノ/アントニオ スカルメタ (著)鈴木 玲子 (翻訳)

1960年代のチリの漁村。パブロ・ネルーダと彼専属の郵便配達夫マリオ・ヒメネスとの交流を描く作品。量的にも内容的にもすぐに読み切れる。ストーリーや文章に読ませるところはあるものの、それは物語の設定から読者が事前に期待するであろう感動の領域を、大きく超えるものではなかった。それでも、この本の中にある素朴さや懐かしさを求めて、またいつか読み直すことになると思う。

世界史/ウィリアム・H. マクニール

気になっていたので読んでみたが、結果的に時間の無駄だった。世界史を学ぶこと自体は様々な点で有益だ。ただ、この本がその最良の書かと問われたら、答えは否だ。何より日本語の読者にとっては、訳が悪い。あとから調べると、これは至るところで指摘されていた。特に下巻で文章がスムーズに流れない箇所が多く、著者の伝えたいことが伝わらない。これはつまり、訳者が原文の正確な意味をつかめていないか、または日本語に直す能力が低いかのどちらかと言わざるを得ない。一方で、内容もそれ自体が若干無機質で、下巻からは西洋史の知識を前提として話が進んでいる。結局、私にとって本書は著者の個人的な歴史解釈のまとめ書きという印象しか残らなかった。一般読者が世界史の面白さに魅了されるような類の本ではない。

What I Wish I Knew When I Was 20

“二十歳の時に”と書いているが、それは著者が大学生を相手に講義をする身であり、また、この本が彼女の息子のために書かれたからであって、実際には二十歳を過ぎた人が読んでも有益だ。ただ、やはり若いうちに読むべき本だと思う。これを読んだら人生が劇的に変わるという訳ではないが、この本に紹介されている多くのエピソードは面白く刺激で、その蓄積が醸成されて、今後の人生を歩む上での心構えができる。そんなこの本から私が一行だけ抜き出すとしたら、それは次のものだ。“Attitude is perhaps the biggest determinant of what we can accomplish.”

※原書で読んだので訳書の良し悪しはわからない。

Song About The Moon

ポール・サイモン。才能のあるアーティストとはこういう人のことを言うのだと思う。